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Vol.521 安重根義士記念館を行く [韓国カルチャー]

 徳寿宮前から市内バスに乗って、南山中腹にある安重根義士記念館へ向かう。
 南山図書館前で下車して、図書館の脇にある林を抜ければ、2010年にリニューアル・オープンした記念館の建物裏側に出る。

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 前の記念館は、朝鮮様式に沿った瓦葺きの建物だったが、今はソウルの街中にゴロゴロしているつまらない現代様式、こういうのを見るたびに、行政の裏にいるゼネコンの影を感じる。
 全面ガラス張り、長方形をした4棟の奇妙な建物からなっていて、いかにも光熱費が無駄にかかりそうだ。

 ちなみにここからソウルタワーまでそれほど遠くはなく、料金の高いケーブルカーを使いたくない人や、麓から山頂上までは歩きたくない人にも、中々、合理的なルートかもしれない。
(「南山行き」といえば専用の循環バスが存在するが、これがとんでもない代物、時間を無駄にしたくない人は使わない方がよい)。

 記念館近くには、お決まりの上着を翻す安重根の像があり、その他にも至る所に指を詰めた手形がシンボル化されて配置してある。

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 最近日本で目立ち始めているお手軽な反韓・嫌韓派にとって、のっけからツッコミどころ満載だが、真面目な右翼の人たちからすれば、意外と敬意を持って向き合える雰囲気も漂っているのではないだろうか。

 この建物は、ソウル市特別教育研究情報院およびそれに隣接する広い駐車場が隣接しており、ソウルタワーに向かうための中継基地のような場所になっていて、人影こそ多いが、その流れは記念館とは全く反対方向だ。

 記念館に入ってみると、非常に静かである。
 そういうことを求められる場所でもあるけれど、それ以前に人がいない。

 ボランティアらしき学生の案内で、ルートに沿って展示場に進むことになるが、まず対面するのが鎮座する安重根を描いた、白く巨大な像だ。

 とりあえず、像の前で黙祷するふりをして先に進む。

 内部は意外と狭く、4棟全てが展示場に割り当てられている訳ではないようだ。
 展示場として機能しているのは2棟だけといった感じで、後は何に使っているか、謎である。
 まあ、安重根の歴史研究施設があるということにしておこう…

 エスカレーターを上がり、表示に従って先へ先へと行く。
 筆者が訪れた時、先行している入館者は幼児を連れた若い夫婦のみ。
 そこに剣呑な空気はなく、何かのついでに訪れたといった感じである。

 展示内容は、韓国この手の施設、お約束の展開だ。
 そこに日本人として怒りを感じるか、呆れるか、失笑するか、はたまた賞賛するかは人それぞれだろう。
 
 筆者第一の感想は、基本的にここが、歴史を考えたり、伝えたりする場ではない、ということである。

 これは西大門刑務所や民族独立記念館も似たようなものだが、史実うんぬんというより、韓国独自のカルト教義を教授する施設であって、その教典を展示している場所、と考えたほうが外国人には分かりやすいかもしれない。

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書かれている意味は日本のそれと違うんだろうな…

 日本人として興味を惹かれるのは、やはり当時の日本語資料だろう。

 ガラス・ケースの中にしまわれている文書の多くはレプリカと思われるが、普通の日本人ならそこそこ内容が読めるものなので、これじゃ、韓国人にとって逆に都合悪いのでは?なんて気もする。

 だが、今の韓国、ごく一部の専門家や日本語使い以外は、何が書かれてるか読めないと思われるので、韓国人相手であれば問題にならないのだろう。

 各フロアは安重根に関する各エピソード別に分けられていて、あるフロアでは逮捕された安重根が如何に不当な裁判を受け、さっさと処刑されたかが強調されて説明されている。

 が、そこにある日本語資料を読むと、その主張とは逆の印象も受ける。
 それは当時、我々日本人が思う以上にまともな裁判が行われ、日本側には彼を公平に扱うよう主張する人たちが少なからずいたようにも解釈できたりするのだ。
 昔の裁判を現行と照らし合わせて文句たれるなら、それは安重根に限らず、別の事件で捕まった当時の日本人だって同じようなものだったのでは?
 
 例の十五箇条も紹介されているが、これもまた精読すると逆効果といった感じだ。
 だからこそ、展示前半の部分で伊藤博文が、大陸征服の個人的野望をたぎらせる【悪の頭領】如く扱われているのかもしれないが…

 この施設に子供たちを伴って訪れた大人の中で、展示された資料をちゃんと理解し、きちんと説明できる人が、果たしてどのくらいいるのだろうか?(…といいつつ、それは日本でも大して変わらないか)

 個人的に最も興味を惹かれたのが、暗殺当時、安重根が使ったことになっているM1900ピストルのレプリカと伊藤博文の検死所見だ。(ちなみに、以前の記念館ではブローニング・ハイパワーが展示されていた)

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 伊藤博文に打ち込まれたという弾丸の写真もあって、ご丁寧なことに弾頭には十文字が彫ってあったりするけど、変形していないし、線条痕も付いていない。

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展示は写真のみ

 伊藤博文暗殺については、当時から【安重根=実行犯にあらず】説が根強く囁かれていて、その証拠として遺体からはフランス製カービン銃の弾頭が摘出されたという話があったので、そこら辺について何か説明されていないかと期待していたのだが、さすがにそれは見当たらず、ちょっと残念。
     
 あくまでも安重根が32ACPを伊藤博文にぶち込みました、という前提だったが、詳しい人が日本語で書かれた検死所見を読めば、何か別のものが見つかるかもしれない。

 その他にも「断指同盟」結成の際に切断した指先のレプリカとか、安重根が収監された監獄の再現などがあって、ハードゴア系好きなら、そそられそうな展示物がおいてある。

 でも、筆者的には「こうして記号ばかりが残され、そこから憎悪が増幅され、次の世代へ捻じ曲げられて継承されてゆくんだろうな」という、悪い見本にしか思えない。

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 展示を全て見終わると出口直前にお土産物屋があって、「安重根」印のネクタイやら湯のみやら、その他小物がやる気なさげに置かれていて、購入できるようになっている。

 筆者が建物を出る直前、入り口の安重根像の前には見学に来た小学生と思われる一行が来ていて、引率者になにやら説明を受けていたけど、それを眺めながら、彼らのうち一人でもいいから、展示内容に疑問を抱き、カルト的くびきから離脱した立場で歴史を学ぼうとするきっかけに、この施設がなってくれればなあ、と切実に願うのだった…

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