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Vol.151「SAW4」いつまで続くジグゾウ道 [映画]

 (ネタばれは一切ありませんので、安心してお読みください)

 ここ5年くらい、企画&公開された映画の中で「SAW」というシリーズは、もっともコストパフォーマンに秀でた企画だったのではないか。
 新人たちが手がけたという意味でも、新人ならではの意外な斬新さがところどころにあって、「SAW」のラストは非常に関心した記憶がある。

 二作、三作と続くにつれて、新鮮さと面白さは激減したが、今のところ一定の質は保っているし、各作品とも完全にお話が繋がっているところも、映画が、だらだら続くつまらないシリーズになることを防いでいる。
 二作目を観終えた時、「ああ、このシリーズも質的におわりだな」と感じたのだけど、三作目ではこれまた意外な「続く」で終わっていて、どうしても次が観たくなった。

 「SAW4」は「SAW3」の完全な続編だ。
 単なる続きではなくて、続けて観ないとなにがなんだかわからなくなるくらい、密接した続編になっている。
 そういう点では新規参入のお客さんには不親切、DVD販売には効果的な内容なのだけど、四作目に至って、ようやくジグゾウ役のトビン・ベルがいかに優れた俳優であるかを実感した。

 ねぼけ眼に半開きの口、しかも末期がんの爺さんというキャラは、この手の映画では類を見ないくらい特異な悪役なのだが、「SAW4」最大の見所は、トビン・ベルの役作りにかける深さを感じられることだろう。ただし、それは前三作を観ていないとわからないかもしれないのが難点だ。

 トビン・ベルも、あちらの俳優の多くがそうであるように、おそらくはメソッド演技の訓練を受けた人だとは思うのだけど、へんなギラギラさはすでに枯れていて、とてもいい具合にこなれている。

 どうせ「SAW5」も「SAW6」も「SAW7」も作られるのだろうが、トビン・ベル演じるジグゾウが出てこなくなった時、このシリーズはどう変質するのだろうか。
 
 トビン・ベル無きSAWって、ピンヘッドが出てこないヘルレイザーみたいなもんであろう。

ソウ

ソウ

  • 出版社/メーカー: アスミック
  • 発売日: 2005/10/26
  • メディア: DVD


ヘル・レイザー

ヘル・レイザー

  • 出版社/メーカー: ビクターエンターテインメント/CIC・ビクタービデオ
  • 発売日: 2001/12/19
  • メディア: DVD


Vol.147 「クワイエット・ルームへようこそ」 真面目であることの辛さ [映画]

 松尾スズキの新作「クワイエット・ルームへようこそ」は拍子抜けするほど地味で普通な作品、でも、それだからこそ、感動的でもあった。

 原作兼監督の松尾スズキという人は、演じているキャラクターであるとか、書いている作品からイメージすれば、とてもキッチュなイメージの人である。しかし、本当はマジメで不器用で真剣な人ではないだろうか。そんな印象が、この「クワイエット・ルームへようこそ」からは滲み出ている。

 考えてみれば、この「クワイエット・ルームへようこそ」という映画が完成した時期は、松尾スズキが倒れて療養生活を余儀なくされた頃と、ほぼ同じような気がする。

 私はTVブロスという雑誌を昔から愛読しているが、氏が担当しているコラムの雰囲気が、闘病生活を終えて復帰してから、ガラリと変わったことには驚いた。
 書いている内容からはアナーキーでデタラメな印象を受けるが、物書きのプロとして、読者をいかに楽しませるか?といったことへの努力をかなり感じさせるコラムでもある。聞いた話では、氏は締め切りをきちんと守る人だという。

 しかし、氏が久々にTVブロスに復帰してから、その文体は、あざといものから、より自然体なものになった。それは、いままで突っ張っていたものから、より自分を自然体に表現しよう、という気持ちの変化にもみえた。

 「クワイエット・ルームへようこそ」という映画の真面目さを思うとき、闘病後のTVブロスにおける記事の変化もまた、松尾スズキという人の真実に近いのかな、と思ったりもする。

 映画「クワイエット・ルームへようこそ」は一見、どぎつい。
 でも、その裏側にあるまっとうさ、まじめさから、松尾スズキという人物像が垣間見えるような映画でもあり、ちょっと辛い感動が観終わってから、やって来るのだった。

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2008年8月28日より韓国で公開済(配給は㈱スポンジ)


Vol.146 「インベージョン」はどうやら侵略されたらしい [映画]

 先ごろ封切られ、あまり人が入らなかった「インベージョン」をやっと観ることが出来た。
 ジャック・フィニィ原作の小説を「また?好きだねぇ」といった感じの再々再映画化だ。
 ただし、今回は今風なアイディアがたくさん取り入れられていて、毎度お馴染みのさやえんどうの怪物は出てこないし、主人公も女性精神科医と、現代的なアレンジが多数なされている。
 ヴェロニカ・カートライトが出ているところは、カウフマン版へのお遊びといったところか。

 私がなぜ、この映画をわざわざ観にいったかといえば、監督が「ヒトラー最後の12日間」で注目を浴びた、ドイツのオリヴァー・ヒルシュビーゲルだったからだ。
 「ヒトラー最後の12日間」は色々と物議を醸し出した映画だったが、戦後の今だからこそ作れた映画であり、それでもドイツでドイツ人が製作するには、大変な勇気が必要だったと思う。
 人間ヒトラーを描いた映画としても、現代史を描いた映画としても、非常に優れているうえ、視点も斬新であり、今後記憶されるに相応しい傑作だった。

 そのオリヴァー・ヒルシュビーゲルが使い古されたネタを撮った訳だから、興味深々。
 結論として、映画のシナリオは非常によく出来ており、主人公が女医であったことが、映画をより現代的にする大きな効果を生み出した。
 やや長髪気味のダニエル・クレイグも、粗野なボンド役に比べたら、遥かに格好いい。
 映画のテイストも、アメリカ映画には無いシュールで端正な趣、アメリカを舞台にしているのに、どことも言いがたい幻想的な雰囲気に包まれていて、こけおどしや派手なアクションがないのも好印象だ。

 しかし…

 オリヴァー・ヒルシュビーゲルのチームが撮ったものは、明らかに映画を製作させたハリウッドお偉いさんのマーケティング志向に合わなかったようで、どうやら大幅な追加撮影や編集による改変が行われているようだ。
 なぜかといえば、全くテイストの違う映像が無理やり随所に挿入され、よく出来たシナリオからは考えられないほど、ひどいハッピーエンドになっていたからだ。

 特に編集は物凄くあざとい。オリヴァー・ヒルシュビーゲルはこんな仕上がりは想定していなかったのでは?本来だったらメチャクチャになりかねないものだが、皮肉なことに、このあざといばかりの編集が大変素晴らしいことが救いになっている(笑)。

 オリヴァー・ヒルシュビーゲルは出来上がった映画を観てどう思っているかわからないが、「ハリウッド映画だからね仕方ないさ。ギャラもよかったし…」と肩をすくめているのかもしれない。
 これはこれで観るべき価値のある作品にはなっていたものの、オリヴァー・ヒルシュビーゲル版ディレクターズカットを観たい、とつくづく思わせる映画でもあった。

盗まれた街 (ハヤカワ文庫 SF フ 2-2)

盗まれた街 (ハヤカワ文庫 SF フ 2-2)

  • 作者: ジャック・フィニイ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 文庫


SF/ボディ・スナッチャー [MGMライオン・キャンペーン]

SF/ボディ・スナッチャー [MGMライオン・キャンペーン]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/01/19
  • メディア: DVD


ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション

ヒトラー~最期の12日間~スタンダード・エディション

  • 出版社/メーカー: 日活
  • 発売日: 2006/11/10
  • メディア: DVD


私はヒトラーの秘書だった

私はヒトラーの秘書だった

  • 作者: トラウデル・ユンゲ
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2004/01/25
  • メディア: 単行本


Vol.145 「ブレード・ランナー」 蘇る伝説のディストピア [映画]

 来る11月17日、「ブレード・ランナー ファイナル・カット」が限定公開された。
 現時点での最終版であった「ディレクターズ・カット」にやや追加・修正を行い、デジタル原版として完成された内容だ。
 基本的には大きな変化はないが、音のクリアさが段違いで、全編「こんなに日本語の台詞が混じっているなんて」と、驚かされた次第であった。

 数年前公開された「エイリアン」のディレクターズ・カットは、今まで切られていて観ることが出来なかったシーンの復活が売りだったが、正直いって、従来のヴァージョンよりキレが悪くなり、最初の編集判断が正しかったことを皮肉にも証明してしてしまった作品にもなっていたが、今回の「ブレード・ランナー」の場合は、リニューアル化が実にうまくいったお手本のような出来栄えだ。

 この作品はSF映画古典中の古典であり、映像クリエイターにとっては作品を作るうえでの定番テンプレートだったが、最近のBBSなんかを読んでいると「DVDで初めて観た」とか、「TVでしか、観たことがない」といった発言が増えていて、時代を感じさせる。

 今の時代、シネコンと安値なDVD再生機器普及のおかげで、映画ビジネス市場は再び活況を見せているように思えるが、かつての古典を映画館で観る機会というものは、逆に激減している。

 「ブレード・ランナー」劇場公開に踏み切ったワーナーの判断に感謝したいが、やはりかつての名画座のような存在が今の時代、一層必要なのではないか?と考えさせられる出来事でもあった。

 やはり映画は映画館で観るからこそ、その真価が理解できるのであって、DVDは画質が綺麗でも、結局はDVDでしかなく、TV放送もまた、同様なのであり、DLPだろうとフィルムだろうと、映画館の絶対的価値というものは、やはり不変なのであって、古典だろうと駄作だろうと、日本映画だろうとハリウッド映画だろうと、韓国映画だろうと、なんら変わりないのである。


Vol.143 「仮面ライダー THE NEXT」 ショッカーを再び考えてみる [映画]

「仮面ライダー THE NEXT」を観る。
石ノ森章太郎テイストたっぷりの雰囲気と、出渕裕リファインの仮面ライダーはとっても格好いいのだが、時代遅れのホラー話に、仮面ライダーがオマケのようにちょこっと乗っかっただけなので、納得いかなかった人も多かったと思う。
 
映画の面白い、つまらないとは別に、観ていてつくづく感じたのは「ショッカーって、いつも、なんか間が抜けているなぁ」という感想だった。
 
私は一番最初の仮面ライダーから、仮面ライダーXくらいまで、リアルタイムで観ていたクチだが、就学前の児童であっても、当時から「ショッカーって、なにかヘン」と疑問に感じていた。
学校に上がると、やはりそう感じていた連中が他にも何人かいて、「ショッカーって、やっていることが間抜けだよな」と、よくお笑いネタにしていた。
 
ショッカーという組織は確かに、ある意味、凄い。
民生、官制を超えたオーバーテクノロジーに資金力、世界中に支部を持つ組織の規模と、別に意味不明な世界征服なんて志さなくてもいいのじゃないか?と思わせる。
だが、いつも肝心なところがいつもズレていて、市井のボランティアに過ぎない仮面ライダーとその仲間たちに、あっという間に悪巧みを撃破されてしまう。
戦闘員一人の育成と扶養だってかなり経費がかかっているだろうし、全体の運営コストは、相当なものだろう。でも、零細企業と個人の連合に、いつも負けてしまうのだ。
 
今回の映画に出てきたショッカーを見ていて、次のような体質の組織なのだろうと想像する。

●オーナーである首領が趣味で立ち上げ、極個人的思想に基づいて運営しているカルト集団、政治結社である。

●首領は大金持ちである。技術系企業を経営しているか、なにかしら特許を持っており、その方面での人材と資金調達に長けている。カリスマだが、部下に恵まれない。

●上層部は、首領の茶坊主ばかりが集まっている。組織運営がずさんで、組織内の自己浄化する仕組みが機能しにくい。

●人事もいい加減。怪人たちや戦闘員を使い捨てにするゆえ、まともな幹部が育たない。

考えてみれば、ショッカーって、バブル経済崩壊後、ばたばたと倒れていった企業群によく似ている。
本郷猛にしても、一文字隼人にしても、そういったショッカー経営陣のダメさ、人望のなさに嫌気がさし、組織を裏切ったのではないだろうか。
それに、二人とも命を狙われている割には、のんきであって、本音では「ショッカーなんて、ちょろい」と思っているのではないだろうか。
なにせ、本郷猛に至っては、ショッカーマークのカスタムバイクに乗って、毎日通勤しているくらいなのだから…

仮面ライダー THE FIRST

仮面ライダー THE FIRST

  • 出版社/メーカー: 東映
  • 発売日: 2006/04/21
  • メディア: DVD


Vol.134 「アヒルと鴨のコインロッカー」 [映画]

「アヒルと鴨のコインロッカー」を観た。
伊坂幸太郎の小説というものは、日本語という言葉あってこその世界観だと思っていたので、映画にするとどうなるか、非常に興味があった。

映画の最初はかなりクサい、というか原作の文体感覚を映画にすると、やっぱりこんなふうになっちゃうの?という感じではあったけど、話が進むにつれて、とても感動的な物語へと変化していく。

特に黒髪の瑛太がいい。
彼は尖った役がどうしても多くなりがちだが、この作品で演じた朴訥な役柄はとても彼の個性にあっていて、それを観るだけでもこの映画の価値がある。

伊坂幸太郎描く世界というものは、針金やら毛糸やら毛髪やら、異質の材料が不本意に絡み合って出来てしまったバサバサの太いロープのようなものだと思う。

世間は無常で冷たく、人々は利己的で悪意に満ちている。
だけど、心のどこかに些細なやさしさだとか、善意も必ず持っている。
それが世界を白でも黒でもない、危ういバランスの領域に、かろうじて留まらせている。

この映画は、原作の作家性を尊重するためか、仙台とその近郊でロケがなされているが、地元の人でないと、どこかよくわからないくらい地味で特徴がない。

だけど、仙台で撮りながらも「牛タン、牛タン」と連発し、強盗に押し入る本屋は「なにわや」で、やっぱりブータン人が重要な役割を果たす。

そこもまた、実に伊坂幸太郎的だったと、観た後にしみじみ感じさせる作品だった。

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2006/12/21
  • メディア: 文庫


Vol.129 「ストレンジア 無皇刃譚」 それは「もののけ姫」後日譚 [映画]

アニメーション映画「ストレンジア 無皇刃譚」を観る。
マンガ原作ではなくて、完全のオリジナルだったためか、宣伝はろくになされず、知らない人の方が多いかもしれない。
タイトルもポスターも、時代劇であること以外、どういう作品か全くイメージが浮かばないデザインだ。

なぜ「観にいったのか?」といえば、製作がボンズであり、脚本が高山文彦だったからだ。
ボンズは筆者が一番期待をかけている日本のアニメーション会社、ブランド名では某ジブリに遥か及ばないが、将来性では遥かに上回っている会社だと信じている。
そう確信させたのが「鋼の錬金術師」劇場版だった。
高山文彦も知る人ぞ知る、アニメーションの名監督、チャンスに恵まれれば、宮崎駿と肩を並べる可能性があった人だと今でも思っている。
宮崎駿が「黒澤明」に例えられるなら、高山文彦は「小林正樹」といったところだろうか。

「ストレンジア 無皇刃譚」は黒澤時代劇の再現をアニメーションで試みたかのような世界観であり、松竹の「たそがれ清兵衛」路線にちょっとだけ便乗して作られたアニメーションにも見えなくないが、基本的にはファンタジー、正統派時代劇とは異なる。
上映時間が3時間から4時間くらいの尺だったら格段に面白い作品になったと思うが、2時間程度ではダイジェストといったところで、ちょっと消化不良な出来栄えだ。
ただ、斬り合いのシーンは凄いし、暗くハッピーでない物語も、「蜘蛛巣城」以降の黒澤時代劇を連想させた。

この作品を観ていて、まず感じた事は、ジブリ以外のスタッフの手になる「もののけ姫」パートⅡだったのではないだろうか?という感想だ。

物語は、下克上の戦国時代を舞台に、中国・明からやってきた特命の武装集団と、もののふたちの激突を中心に進んでゆく。
悪魔のように強い明の武装集団に、日本の侍たちは圧倒されるだけでまったく歯が立たない。
物凄く強いはずの主人公でさえ、押され気味だ。
だが、明側は、あくまでも個人主義の傭兵であり、薬物で精神的な部分を補っているに過ぎず、利己的でバラバラだ。
逆に、日本人たちは個々が弱くても、優れたリーダーが立った途端、統率されて圧倒的な力を発揮し始める。
最後の戦いは、奇しくも現代における「日本と中国」の衝突を比喩したかのような展開になっていて、単なるアクション時代劇というよりも、東洋の果てで起こった「文明の衝突」を描いているかのようであり、近隣関係にある文化というものは本質的にシビアな関係であることを描いていたかのようでもある。

かつて、宮崎駿監督が「もののけ姫」で描いたものは、日本と大陸の衝突だった。
サンやアシタカたちは古来から日本で育まれた文化の象徴であり、彼らを追い立てるエボシ御前率いる武装集団は、渡来した文明の象徴だった。

「ストレンジア 無皇刃譚」には、サンもアシタカも出てこないし、両者を隔てる時間も100年程度だろう。
だが、この映画で明の武装集団と戦う武士たち=虎杖将藍らは、「もののけ姫」におけるエボシ御前ら直系の子孫と読む事も可能だ。

それは、同じ文化圏にあるとされている日本、中国、朝鮮半島の関係が、必然的に衝突を繰り返す宿命から逃れられないのでは?ということも「ストレンジア 無皇刃譚」は描いていたように思えるのだった。

もののけ姫

もののけ姫

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2001/11/21
  • メディア: DVD


超時空世紀オーガス02

超時空世紀オーガス02

  • 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
  • 発売日: 2001/11/25
  • メディア: DVD


キングダム・オブ・ヘブン

キングダム・オブ・ヘブン

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/01/26
  • メディア: DVD

劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 (UMD Video)

劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 (UMD Video)

  • 出版社/メーカー: アニプレックス
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: DVD


Vol.126 「パンズ・ラビリンス」夢と現実の交差点 [映画]

一部で評判になっていた「パンズ・ラビリンス」が、やっと日本で公開された。
内容が内容だからどうしても上映館数は少なくなってしまうが、「ファンタジーのあり方」に関心のある人には是非観て欲しい作品だ。

映画は最後まで暗い。
映像は個性的で美しくグロテスクで残酷、若かりし頃のリドリー・スコット作品群を連想させる。
これも「パンズ・ラビリンス」の大きな価値だろう。

物語はフランコ政権下のスペインを舞台に描かれる。
市民戦争の勝利者ファシスト軍人は厳格かつ冷酷な統治者であり、敗者の反体制派はゴキブリや蝿と同じだ。

そんな俗世間に輪廻転生した地下王国の王女は、ある日、パンから過酷な課題を突きつけられる。
その難問をクリアすれば、王国は蘇り、彼女も復活できるという。

しかし、少女が困難に直面しても、白馬に乗った王子は現れない。
課題を提示する狡猾なパンも信用できるかどうか、全くわからない。
少女は孤独な選択を強いられ、大人たちは憎悪と争いに明け暮れる。
やさしさや愛など、どこにもないのだった。

この「パンズ・ラビリンス」の素晴らしい点は、最後まで幻想と現実が密接に交差し続けることだ。
幻想の世界でも現実の世界でも、都合のよい幸運は降ってこないし、幻想世界の連中も生きるか死ぬかで、切ったはっただ。

結果、少女は現実を失うことで、王国復活への夢を得る。
しかし、それが果たしてハッピーエンドだったのかどうかは、観客に問題を投げかけて映画は終わってしまう。

でも、「ファンタジー」って、本来、こうあるべきなのではないか?

トールキンの「指輪物語」が後世に大きな影響を与え、今でもファンタジー文学の最高峰に君臨し続けているのも、幻想と現実の連結を絶対に失わない世界観を持っているからだろう。

「美しい世界で、みんな幸せ、めでたし、めでたし」
それだけでは本当の支持を得られない。
読んだり観たりするのは現実の人間だからだ。

ファンタジーは現実あってこそ存在できるものであって、現実との接点を失えば白々しい嘘にしか過ぎず、現実と表裏一体であることを忘れなければ、強い説得力を持つ。
その原則を「パンズ・ラビリンス」は見事に体現した作品だったのではないだろうか。

©Warner Bros. Pictures/Tequila Gang


Vol.125 「キングダム」シンドい国際化社会 [映画]

「国際化」だとか「グローバル化」だとか、声高にいわれるようになってしばらくが経つ。
でも外国語がいくら出来ても「グローバル化」するわけでもないし、英語をいくら習っても「国際人」になれるわけでもない。「国際相互理解」をいくら謳っても世界が平和になるわけでもない。

「グローバル化」とそれに類するものがもたらしたもの、それは愛や平和、平等よりも、不満と不公平、悪意と敵意、流血と環境悪化の方だったかもしれない。

アメリカ映画「キングダム」は、アラブとアメリカの対立、ということよりも強引な「グローバル化」推進による文明の疲弊を訴えた内容にも解釈できる作品だった。

そのオープニングは素晴らしい。
アメリカとアラブ首長国連合の複雑で危うい関係をシンプルにスピーディーに解説するとともに、「グローバル化」なんてものは一部利権者のビジネス戦略でしかないことをさらりと批判する。
そしてアラビア半島周辺で、中央アジアで、その他世界中で暴れるイスラム原理主義者過激派にとり、日本もまた憎悪対象であることをはっきりいってしまう。

日本人が「対岸の火事、どうせ関係ないや」と思っていても、災いは向こうからやってくるという事実を突きつけるのだ。

主人公四人組は、残酷な報復テロにあっても、白旗掲げて、相手の良心に期待したりしない。
敵意をむき出しにする相手に、「やられたら、やり返せ!」と武器を持って殴りこみ、老若関係ない大虐殺だ。
でも考えてみれば、彼らの「なめられるな!」精神って、グローバル化や国際化、もうひとつの根幹なのではないか??

そうだとすれば、「国際化」「グローバル化」というものは、なんとシンドくて疲れるものであることか。

「キングダム」、それは憂鬱な王国でもあった。

                       
                      ©Universal Pictures
                        Relativity Media


Vol.72 トランスフォーマー/たたかえ!TRANSFORMERS [映画]

去る6月28日、韓国で「トランスフォーマー」が一足早く公開された。
すでに560万人を超える動員数を記録し、大ヒット中だ。
この手のジャンルに冷たい韓国で、一ヶ月経たない内にこの数字を叩き出したことは、近年韓国で公開されたハリウッド作品の中では断トツだ。

しかし、韓国において「トランスフォーマー」というもの自体、別に人気があったわけではない。 日本だったら「おもちゃ+へなちょこアニメ」といった印象があり、今に至るまで大人の間でも根強い人気があるが、韓国では「おもちゃ+コミック」のイメージが強いらしく、アニメ版についてはあまり愛着が感じられない。

ちなみに昔から今に至るまで「トランスフォーマー」のアニメーションは製作会社の仕切りを替えつつ製作され続けているが(全ての権利を統括しているのはアメリカの玩具会社ハスブロウだ)、元請けはアメリカや日本の会社であっても、さらにその下請けを担当しているのは、ずっと韓国の会社である。

特に過去の何シーズンかは実質、韓国の会社に丸投げされた形で製作されたらしく、よくも悪くも「へろへろ」な演出ぶりで、いわば当時の韓国アニメのテイストそのままといえるかもしれない。

今回公開された実写版「TRANSFORMERS」は、マイケル・ベイ監督らしい、ミリタリー&メカ描写のこだわりに満ちており、かなりハードな印象を受けるが、その反面、人間側のドラマがかなり脱力系で、人によってはどっちらけになるかもしれない。
だが、そのユルーい部分こそ、アニメ版へのオマージュであり再現であって、子供の頃から親しんできた日本の、大人の観客の方が、そういった確信犯手的なお約束を楽しめるのではないか。
この映画はいわば歌舞伎であり、リアリティを強要して非難を浴びせるようなものではなく、だめなところもだめで楽しむべき作品なのだ。

仲間の呼びかけに共鳴して、サイバトロンたちが一斉に地球に飛来するシーンは、アニメに慣れ親しんだ大人なら感涙ものであり、主人公の高校生とサイバトロンたちの間抜けなドラマはやや冗長でだれるけど、どこか懐かしく、牧歌的、とても批判する気になれない。
車道楽の親父が息子の誕生日に「男になれ」とばかりに車を買い与える、というシーンも、古き良き思い出、といった風情で、なかなか感動的だったりもする。
日本に対するネタもいくつかあって、高校生の主人公が自分の愛車がロボットに変形するさまをみて「…From Japanese…From Japanese…From Japanese」とうろたえるシーンは韓国の観客の笑いも誘っていた。

しかし、この映画は、のーてんきなだけではない。
今の国際情勢もまた、かなり含んでいて、謎の攻撃を受けたアメリカの分析官が「相手はロシアか北朝鮮、…もしくは中国だ」と言い放つところは非常にはっきりしている。
そして、この映画は本質的には残酷な戦争映画でもある。
昔のP.バーホーベンが撮っていたら血と肉片が溢れかえる映画になっていただろう(だけどえらく面白くなっていただろう)。

サイバトロンとメガトロンの容赦ない戦いは凄惨そのもので容赦がない。
ちなみに興行上の事情で人が死ぬシーンや血が出るシーンはほとんどないが、この映画で描かれたことが現実で起こったならば、とても正視できそうにもない阿鼻叫喚のリアルな戦場が描かれてもいる。

セクション7に捕獲されていたメガトロンが覚醒してからクライマックスまで、映画は凄まじい戦いの連続で、それまでのまぬけさ100%から大きく180度転換する。
最後の市街戦には911テロ以降、身近になってしまったテロというリアルが切実に映像には投影されていることにも注意して欲しい。

結論として、この「トランスフォーマー」という映画は、日本でも子供から大人まで楽しめる作品であることは間違いないが、オリジナルのヘナチョコさがわかっているお父さんたちの方がぐずる子供をほったらかして夢中になりそうな、燃える野郎の映画でもあるのだ。
だから、お子様たちは覚悟せよ。
誰でも万歳な映画ではないけれど、また観てもいいな、と筆者は強く思ったのだった。

ちなみに韓国では公開当初から違法DLが巷に出回り、それを観た輩がこの映画を「くそだ、なんだ」とけなしているが、これは実に残念であり悲しいことだ。
そして、そういった風潮が、こういったコンテンツを作っている連中の間にも強い、という事実も、当人自身が自覚して改める努力をしない限り、どうしようもない。

その自分勝手な「みんなやっているからいいだろう」的認識が廻りまわって、自らに降りかかってくる訳なのだから…

トランスフォーマー ザ・ムービー

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  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2001/01/25
  • メディア: DVD


トランスフォーマー ムービー オプティマスプライム MA-01

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トランスフォーマー ムービー MD-07 メガトロン

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