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Vol.527 ある俳優の死 [韓国カルチャー]

 2015年6月。
 韓国のマスコミで二人の男優の死が報じられた。

 一人は김운하(=김창규)氏(40)で、ソウル市内にある考試院の一室で病死しているところを、もう一人、판영진氏(54)は、高陽市自宅近くの車中で自殺しているところを発見された。

 なぜ、この二人の死が韓国で少々話題になったかと言えば、共に世間では無名の中年男優であり、恒常的に生活苦を抱えていたらしいということであり、それは「韓流」という虚偽から遠い位置にある職業俳優たちの「リアル」でもあったことが大きいと思う。

 「売れない俳優が生活に困っている」
 そのこと自体は日本でも珍しくない話だし、スターになればなったで「板子一枚下は地獄」な訳だから、「俳優の生活苦がどうたら、社会福祉がどうたら」といった批判に便乗して何か言う気はサラサラないのだけど、このニュースがなぜ個人的に衝撃的だったかと言えば、筆者は판영진氏が主演した『나비두더지』(2006年度作品/2008年2月22日 韓国一般公開)を、ソウルの映画館で公開当時観ていたからなのである。

 この『나비두더지』という映画は観客動員数が全国で合計126人(!?)であり、いくら主演でも판영진氏を「映画俳優」と平然と呼ぶには違和感をおぼえてしまうのだけど、ワタクシ的には、その年の韓国インディーズ作品中で確実にBESTな一本でもあった。

 いわゆる「アートフィルム」ではあるが、一種の変形サスペンスであり、ダーク・ファンタジーであり、ロケ撮影を上手に活かした特異な世界観の中で、過酷な地下鉄運転手業務に疲れた主人公を판영진氏は好演していたのである。

 劇中の彼は地味で華のない人だったけど、演技は味があったし、なによりもうらぶれてしまった中年男の辛さと孤独がよく滲み出ていて、地下鉄4号線がエンドレスで高架上を走り続ける不気味なラストシーンがとても印象的だった。

 판영진氏の俳優としての経歴はよく分からず、自宅が高陽市だったことから察すると、おそらく俳優業とは別の仕事をしていたか、家族・親戚筋から援助を受けていたのではないかと想像している。

 김운하氏の孤独死については、かつて筆者が考試院で生活していた経験から考えれば、まさに「韓国のリアル」であって、俳優として基本的に舞台の人だったという話を聞くと、これもまた切なく哀しく思うのだった。

 映画出演本数は김운하氏の方が多いようだが、皆端役であり、その何本かを筆者はソウルで観てはいても、残念なことに誰が彼であったのか、全く記憶に無い。

 二人の死を報道した韓国マスコミ本当の狙いの一つが、毎度おなじみの現政権叩きにあったとすれば、それは別の意味で不幸なことではあるのだけど、なによりも亡くなられた二人のご冥福を祈りたい。

 合掌。

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판영진氏唯一の主演作


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김운하(=김창규)氏、最後の出演作と思われる


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Vol.526 名盤紹介『怪物(괴물)』 [韓国映画音楽(OST)]

 今では韓国を「代表する」というよりも、世界の現役映画監督百選に入るだろう、ポン・ジュノ(봉준호)。
 彼が偉いのは、国際的に注目されても韓国という土壌から決して離れず、チャンスをドメスティックなテーマの作品に活かし続けていることだろう。

 その作風は一見大衆性に富んでいるように見えるが、実はかなり前衛的でもあり、「言わぬが花なり」に沿った物語作りが特徴でもあると思う。
 
 ポン・ジュノ作品は、使われる音楽の面でもシュールだ。
 映画そのものと密接に関連した曲作りが行われていて、音楽だけで聞くと、集中力を要したりする。

 ポン・ジュノ作品で音楽を考えた時、まず思い出すのは岩代太郎が手がけた『殺人の追憶(살인의 추억)』だろう。
 曲そのものが作品を象徴していて、何度聞いても無常感と切なさが脳裏に浮かんでくる。

 この『殺人の追憶』OSTが気に入った私は、次の話題作『怪物(괴물)』にも大きな期待を抱き、OST-CDが発売されてすぐ購入したのだが、正直困惑した。
(※)日本公開時題名は恥ずかしいので、ここでは割愛

 この『怪物』で音楽監督を務めているのは自らもミュージシャンとして有名なイ・ビョンウ(이병우)なのだが、映画との密接度、そして実験性といったものが『殺人の追憶』より遥かに濃くなっており、単体で聴くにはあまりにもシンドい内容になっていたのである。

 でも、考えてみれば、この作品の音楽にイ・ビョンウが関わっている時点でそれは予想できたことかもしれない。
 なぜなら、日本でもOST-CDが発売された『장화, 홍련』(オムニバス『Three』の曲を含む)は、美しい旋律ながらも気軽に聴くことを明らかに拒否しているような内容だったからだ。

 『怪物』はその度合に一層拍車が掛かったといえるかもしれず、通して聴くには疲れるが、時には奇っ怪で難解でも、絶えずユーモラスな曲群は、映画音楽というよりもポン・ジュノとイ・ビョンウによる「語り」だったのでは、とも思うのである。

 そこに価値を感じるか拒絶するか、聴く側は二者選択を迫られるような内容ではあるが、敢えてこういうOSTを出したことは高く評価したい。

 でも、今だったらシュール過ぎてCD販売は無理だったのでは??

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Vol.525 鍾路三街界隈を考えてみた [韓国生活]

 鍾路三街。
 地下鉄が複数線乗り入れる場所として、今でもソウルを代表する界隈の一つだが、かつての賑わいを失ってから久しいものがある。
 歴史的に古い繁華街であるが、既に時勢から取り残された感が否めない。

 その理由はいろいろ考えられるが、ソウル市自体の裾野が広くなり、わざわざ鍾路三街に来る理由を多くの人たちが失ったこともその一つだろう。
 古い街故、闇の利権が複雑に絡み合い、問題解決が図れない、ということもあるのかもしれない。

 十数年前は平日でも人でごった返す光景が普通だったが、今では閑散としていることが多く、外国人観光客ばかりが目に付くようになった。

 老舗のゲイ・タウン、「ソウルの新宿二丁目」として以前から有名な場所でもあったけど、それを表立って観光ビジネスに結びつける度量は残念ながら今も韓国社会にはない。

 鍾路三街から乙支路を通って忠武路に至る道筋は、かつてソウルにおける映画興行の中心でもあったが、その面影はすっかり失われた。

 中心だったソウル劇場に昔のステイタスはなく、旧ピカデリー劇場の跡地に建てられた団結社も、鍾路三街の奈落ぶりを象徴するような空きビルと化して久しい。
 ロッテシネマ傘下となった新生ピカデリー劇場が息を吐いているくらいだが、かつてここが韓国映画界で権力を振るっていた某氏の持ち物だったことを知る人はあまりいないだろう。

 私がこの地を初めて訪れた時、地元ヤクザが劇場前で幅を効かせ、チケット窓口で客を仕切っている姿に驚かされたが、それもすっかり懐かしい情景になってしまった。

 屋台街としても有名だったが、これもまた過去の話、今は夕方から夜にかけて開店するポチョンマチャの群れがその面影を微かに引きずるだけだ。

 鍾路三街は、そそられるような美味しいお店が無いことも、困ったことである。
 いや、正確に言えばあるのだが、韓国料理にすっかり飽きてしまった私にとって多くのお店がピンと来ない。
 だから、結局、宿の自炊飯になってしまったりする。

 仮に鍾路界隈の再開発を行うにしても、大掛かりなインフラ基幹から行わないと本当の再生は難しいだろう。
 特に水廻りは大きなアキレス腱だと思う。

 古いソウルの空気を湛えているという意味で鍾路三街は重要な場所かもしれないが、「街」に寿命があるとすれば、そのこともまた、如実に表している哀しい場所なのかもしれない。

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Vol.524 サムゲタン考 [韓国の食]

 日本でポピュラーになった韓国料理に参鶏湯(サムゲタン)がある。
 昔から知っている人は知っていた料理ではあるが、「キムチ、焼き肉、参鶏湯」と並んで日本で語られるようになったのは割りと最近のことなのではないだろうか?

 日本のネットでこの参鶏湯についての評価を調べて見ると「美味しい!最高!大好き!」という意見と、「激まず!ゴミ!臭くて食えたもんじゃない!」という風に賛否両論真っ二つに分かれているようだ。

 日本でも韓国の焼酎モドキを絶賛する人がいるくらいだから、参鶏湯を好きな人がいるのはなんらおかしくないし、嗜好は個人の自由だから別にいいのだけど、これが二十年前ならどういう評価になっていたのだろうか?
 たぶん、こんなにウケていなかったと思う。

 そして、この参鶏湯が一部日本人の間で酷評されている裏側には、「日本で韓国の定番料理が認知される度合い」と「韓国において定番料理の質が低下している度合い」が、比例しながら進行している事情が隠れているような気がする。

 つまり、韓国における韓国料理の味が一般的に低下した頃に、韓流という疫病が流行り、日本人の間で韓国料理が広まってしまったことが、韓国料理を必要以上に「不味い」と主張させる原因になってしまっているのではないだろうか?

 ちなみに筆者は参鶏湯が嫌いだ。
 現地で誘われても「え~!参鶏湯?」と態度に出してしまうし、食堂でも嫌な顔をして食べたりしている。
 だが、美味しいかどうかを問われたら、「美味しい」と答えるだろう。

 実際問題、専門店で出される参鶏湯のスープは大抵美味しい。
 おそらく日本で嫌がられる原因の一つは薬臭いことだが、そういう料理は何も参鶏湯だけではないし、カレーなんかは最たるものだ。
 では、筆者の場合、何が嫌いかといえば、その見た目のグロさである。

 切断面をさらした鶏が一羽(もしくは半羽)が器の中にゴロン、と丸ゆでになって転がっているルックスが生理的に受け付けないし、それをぐちゃぐちゃに崩す食べ方が、よりハード・ゴア過ぎてダメ。
 道路で車に轢かれ続けて、原型がなんだかわからなくなっている犬や猫の死骸を思い出してしまう。

 私が参鶏湯を韓国で初めて食べたのは軍事政権の末期、景福宮駅近くにある「土俗村」だった。
 ここは当時からそれなりに名店ではあったが、今のように人々がやたらと押しかけて行列するようなお店ではなく、もっと地味で冴えない店だった。
 当然、メニューは全てハングル表記、日本語対応も一切なし(というか、日本人自体いなかった)。

 昔も烏骨鶏の参鶏湯が名物だったが、その時の目的は漆の参鶏湯だ。
 この漆の参鶏湯、今では希少メニューになっているらしいが、当時でも、そんなにポピュラーではなかったと思う。

 注文時、「かぶれるかもしれませんよ」とお店の人に注意を受けたが、食べて見ると拍子抜けするほど癖のないあっさり味、美味しくも不味くもなくで、肩すかしだった。
 もちろん、かぶれたりはしない。

 「漆って本当に食べることが出来るんだ~」と感心はしたものの、人様の家庭で出てくる普通の鶏スープの方が遥かに美味しかったので、「韓国の外食って、イマイチだなぁ」という印象を刷り込まれた。
 値段はW8000-くらい、今では考えられないくらい安かった(でも当時の韓国の相場だと通常の倍)。

 最後に韓国で参鶏湯を食べたのは、もう十年前くらいになる。
 知り合い夫婦に誘われて行った、新林駅の十字路近くにあるお店である。
 結構古い地元の定番店だったが、味は至って普通で、絵に描いたような平凡な参鶏湯だった。
 不味くはないが、何か+αに欠けていて物足りないのである。
 知人夫婦が器の中で鶏を上手にグチャグチャにしているのを眺めながら、私はあまり崩さないようにして食べた。

 一番美味しいかった記憶のある参鶏湯は、忠武路の古いビル、半地下に居を構えたお店だった。
 老夫婦が経営する街場の食堂で、味は非常に良く、鮮烈さすら感じるシャープな風味の参鶏湯だった。

 材料とスープの煮込み具合が適度で、具材の個性がちゃんと感じられるのだ。
 食材が良かったのかもしれない。

 場所が場所なので、今ならグルメ・ガイドに載るべき味だったとは思うけど、残念ながら十年以上前に姿を消してしまった。

 …とまあ、それなりに彼の国との付き合いは長くても、今も昔も焼き肉と参鶏湯は興味が無いので、これらについて食べた記憶があまり無い。
 物価高が日本を越えてしまった今、なおさら、これらの「定番料理」を食べる機会は無さそうだ。

 でも、久しぶりに「土俗村」へ行ってみようかな??

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Vol.523 大学路から [韓国生活]

 通称「大学路」がある恵化洞界隈は意外なほど、明洞や鍾路三街といった江北の有名観光地区へ近い位置にある。

 観光案内的に言えば地下鉄4号線を使うのが定番かもしれないが、実はこれが一番効率が悪く、場所(移動先)によってはバスか、思い切って徒歩の方が合理的で早かったりする。

 筆者はこの恵化洞界隈で遅くまで飲んだ後、宿まで歩いて帰る事が多いのだが、そっちの方が時間的に無駄がないからだ。
 でも徒歩で帰る一番の理由は、昌慶宮路から栗谷路に沿った道のりが好きだからでもある。

 昌慶宮路と栗谷路は大きな道路なので、夜中でも結構車が走っているが、住宅街を過ぎてしまうと真っ暗な上、全然人気がなかったりする。

 でも、タクシー代その他をケチる人はどこにもいるから、一見物騒な暗い道であっても、時折独り歩きとすれ違ったりするし、たまに女性の独り歩きを見かけたりするくらいだ。

 途中、ソウル大学病院だとか弘化門があったりするが、昼間とは様相がまるで異なるので、とても面白く感じられたりする。

 正直、犯罪に巻き込まれても仕方ない状況ではあるのだけど、繁華街からこんな場所まで後をつけてくる韓国のワルは、あまりいないような気がする。

 とはいっても、ここ数年、韓国における性犯罪率は急激に高くなっているらしいので、女性にオススメはできなのだが、連れがいるなら暗い夜道を一緒に歩いてみるのも一興だと思う。
 ただし、送り狼に要注意なのは言うまでもない。

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Vol.522 大学路にて [韓国生活]

 ソウルの恵化洞こと通称『大学路』近辺は、高級住宅街でもあるが、江南辺りとやや違うのは良い意味で古い土着臭がそこかしこに漂っていることだろう。

 街自体は小さいが、適度に時間を潰せるお店が揃っているし、スーパーマーケットも複数あり、その品揃えは悪くない。

 映画館は旧ファンタシウム、今のCGV大学路だけになってしまったが、かつては映画館が幾つもあって、それなりにミニシアターの街として機能していた時代もあった。
 宿泊施設がイマイチなことだけは外国人にとって欠点かもしれない。

 「大学路」は演劇の街として日本でも最近は有名だ。
 それこそ大小様々な劇場がひしめき合い、夜遅くになると飲み屋は演劇関係者ばかりになる。
 だからか、大スターになってもこの場所に愛着を抱き続け、常連として馴染みのお店に通う人達もいる。

 「スターに逢いたきゃ、夜の狎鴎亭に行け!」ではあるけれども、業界人たちにとって江南界隈はあくまでもビジネスの場であり、江北界隈はそれに比べると一部の人々にとっての原点なのではないか。
 これは恵化洞のみならず、かなり廃れてはしまったが忠武路こと筆洞辺りにも言えることだ。

 両者に共通するのは古いソウルの情景がまだ残っていることであり、そこに過去の貧乏臭さが垣間見える、ということであり、そしてこれらがソウルで失われつつある一種の安心感に繋がっていると思うのである。

 恵化洞に隣接する明倫洞には有名私立「成均館大学」があるが、その周辺はあまり学生街の香りがしない。
 もっとも、この大学の現主力であろう理系キャンパスはスポンサーたるサムスン財閥のお膝元、郊外の水原市に展開しているので仕方ないのかもしれない。

 「大学路」という名称は日本の旧帝大一翼を占めていた「京城大学」がかつてここにあったことに由来する訳だけど、光復節後、もう少し他の大学が集まっても良かったんじゃないかと思う。

 ソウルで「大学街」といえばどうしてもサブカル系な新村界隈か、ちょっと南に下がってバンカラっぽいソウル大周辺というイメージが筆者にはあるのだけど、恵化周辺にはこれらの界隈にはない、足が地に着いた趣きがあるといつも思うのである。

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Vol.521 安重根義士記念館を行く [韓国カルチャー]

 徳寿宮前から市内バスに乗って、南山中腹にある安重根義士記念館へ向かう。
 南山図書館前で下車して、図書館の脇にある林を抜ければ、2010年にリニューアル・オープンした記念館の建物裏側に出る。

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 前の記念館は、朝鮮様式に沿った瓦葺きの建物だったが、今はソウルの街中にゴロゴロしているつまらない現代様式、こういうのを見るたびに、行政の裏にいるゼネコンの影を感じる。
 全面ガラス張り、長方形をした4棟の奇妙な建物からなっていて、いかにも光熱費が無駄にかかりそうだ。

 ちなみにここからソウルタワーまでそれほど遠くはなく、料金の高いケーブルカーを使いたくない人や、麓から山頂上までは歩きたくない人にも、中々、合理的なルートかもしれない。
(「南山行き」といえば専用の循環バスが存在するが、これがとんでもない代物、時間を無駄にしたくない人は使わない方がよい)。

 記念館近くには、お決まりの上着を翻す安重根の像があり、その他にも至る所に指を詰めた手形がシンボル化されて配置してある。

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 最近日本で目立ち始めているお手軽な反韓・嫌韓派にとって、のっけからツッコミどころ満載だが、真面目な右翼の人たちからすれば、意外と敬意を持って向き合える雰囲気も漂っているのではないだろうか。

 この建物は、ソウル市特別教育研究情報院およびそれに隣接する広い駐車場が隣接しており、ソウルタワーに向かうための中継基地のような場所になっていて、人影こそ多いが、その流れは記念館とは全く反対方向だ。

 記念館に入ってみると、非常に静かである。
 そういうことを求められる場所でもあるけれど、それ以前に人がいない。

 ボランティアらしき学生の案内で、ルートに沿って展示場に進むことになるが、まず対面するのが鎮座する安重根を描いた、白く巨大な像だ。

 とりあえず、像の前で黙祷するふりをして先に進む。

 内部は意外と狭く、4棟全てが展示場に割り当てられている訳ではないようだ。
 展示場として機能しているのは2棟だけといった感じで、後は何に使っているか、謎である。
 まあ、安重根の歴史研究施設があるということにしておこう…

 エスカレーターを上がり、表示に従って先へ先へと行く。
 筆者が訪れた時、先行している入館者は幼児を連れた若い夫婦のみ。
 そこに剣呑な空気はなく、何かのついでに訪れたといった感じである。

 展示内容は、韓国この手の施設、お約束の展開だ。
 そこに日本人として怒りを感じるか、呆れるか、失笑するか、はたまた賞賛するかは人それぞれだろう。
 
 筆者第一の感想は、基本的にここが、歴史を考えたり、伝えたりする場ではない、ということである。

 これは西大門刑務所や民族独立記念館も似たようなものだが、史実うんぬんというより、韓国独自のカルト教義を教授する施設であって、その教典を展示している場所、と考えたほうが外国人には分かりやすいかもしれない。

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書かれている意味は日本のそれと違うんだろうな…

 日本人として興味を惹かれるのは、やはり当時の日本語資料だろう。

 ガラス・ケースの中にしまわれている文書の多くはレプリカと思われるが、普通の日本人ならそこそこ内容が読めるものなので、これじゃ、韓国人にとって逆に都合悪いのでは?なんて気もする。

 だが、今の韓国、ごく一部の専門家や日本語使い以外は、何が書かれてるか読めないと思われるので、韓国人相手であれば問題にならないのだろう。

 各フロアは安重根に関する各エピソード別に分けられていて、あるフロアでは逮捕された安重根が如何に不当な裁判を受け、さっさと処刑されたかが強調されて説明されている。

 が、そこにある日本語資料を読むと、その主張とは逆の印象も受ける。
 それは当時、我々日本人が思う以上にまともな裁判が行われ、日本側には彼を公平に扱うよう主張する人たちが少なからずいたようにも解釈できたりするのだ。
 昔の裁判を現行と照らし合わせて文句たれるなら、それは安重根に限らず、別の事件で捕まった当時の日本人だって同じようなものだったのでは?
 
 例の十五箇条も紹介されているが、これもまた精読すると逆効果といった感じだ。
 だからこそ、展示前半の部分で伊藤博文が、大陸征服の個人的野望をたぎらせる【悪の頭領】如く扱われているのかもしれないが…

 この施設に子供たちを伴って訪れた大人の中で、展示された資料をちゃんと理解し、きちんと説明できる人が、果たしてどのくらいいるのだろうか?(…といいつつ、それは日本でも大して変わらないか)

 個人的に最も興味を惹かれたのが、暗殺当時、安重根が使ったことになっているM1900ピストルのレプリカと伊藤博文の検死所見だ。(ちなみに、以前の記念館ではブローニング・ハイパワーが展示されていた)

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 伊藤博文に打ち込まれたという弾丸の写真もあって、ご丁寧なことに弾頭には十文字が彫ってあったりするけど、変形していないし、線条痕も付いていない。

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展示は写真のみ

 伊藤博文暗殺については、当時から【安重根=実行犯にあらず】説が根強く囁かれていて、その証拠として遺体からはフランス製カービン銃の弾頭が摘出されたという話があったので、そこら辺について何か説明されていないかと期待していたのだが、さすがにそれは見当たらず、ちょっと残念。
     
 あくまでも安重根が32ACPを伊藤博文にぶち込みました、という前提だったが、詳しい人が日本語で書かれた検死所見を読めば、何か別のものが見つかるかもしれない。

 その他にも「断指同盟」結成の際に切断した指先のレプリカとか、安重根が収監された監獄の再現などがあって、ハードゴア系好きなら、そそられそうな展示物がおいてある。

 でも、筆者的には「こうして記号ばかりが残され、そこから憎悪が増幅され、次の世代へ捻じ曲げられて継承されてゆくんだろうな」という、悪い見本にしか思えない。

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 展示を全て見終わると出口直前にお土産物屋があって、「安重根」印のネクタイやら湯のみやら、その他小物がやる気なさげに置かれていて、購入できるようになっている。

 筆者が建物を出る直前、入り口の安重根像の前には見学に来た小学生と思われる一行が来ていて、引率者になにやら説明を受けていたけど、それを眺めながら、彼らのうち一人でもいいから、展示内容に疑問を抱き、カルト的くびきから離脱した立場で歴史を学ぼうとするきっかけに、この施設がなってくれればなあ、と切実に願うのだった…

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Vol.520 ラーメン大作戦 [韓国の食]

 ここ数年、韓国は物価がどんどん高くなっていて、割安感というものがほとんど無くなってしまった。

 ソウルだと東京辺りと大差なくなっていて、質の面を考えれば日本の方が遥かにお得感覚が強くなっている。

 地下鉄やバスがまだ安いのは救われるにしても、昔より交通カード再チャージの頻度が高まったのはいうまでもないし、効率やらサービスを考えると日本のそれに及ばないから、相対的にこちらもかなりパフォーマンスが悪くなっている。

 それではソウルに来て、何が節約できるだろうか?

 元々、筆者は無駄な買い物を韓国ではしない主義だから、最も節約可能な項目と言えば【メシ代】ということになる。

 以前書いたように、筆者は宿近所のマーケットで食材をまとめ買いし、それを毎日調理することで、交際費だとか交通費なんかに回せるお金をW1でも捻出するように努力している。

 今回は、よりケチるべく、食事の基本を袋麺(袋入りインスタントラーメン)で攻めて見ることにした。

 なぜなら、カップ麺よりもコストの面で優れているし、ゴミも少なくて済むからだ。

 ただ、今の韓国、袋麺も決して安くなく、セット買いしても日本で買うのとあまり変わらなかったりする。

 その上、不味い製品が多い(辛ラーメンなんてその代表だろう)ので、大して節約のメリットが感じられなかったりはするのだけど、炭水化物と水分を同時に摂取できるので、忙しい朝は結構合理的で重宝したりする。

 ただし、塩分や脂分を考えると明らかに体に悪いので、袋麺は一日一食とし、そこにおなじみのチョンガクキムチを付け加え、後はバナナで栄養を補う献立を一週間通して見た。

 【調理方法】

 宿で袋麺、といっても調理方法は至って簡単だ。 
 日本のダイソーで買い求めた電子レンジ用ラーメン調理器を使うだけである(ちなみに韓国のダイソーに置いてあるかどうかは未確認)。

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調理器…

 筆者は日頃、この手の料理を食さないので、「本当にこれでラーメンが出来るのかよ」と半信半疑だったが、仕上がりは全く問題なく、韓国製袋麺の場合は、よほどこの調理器で作った方がいいのでは?と思ったくらいである。

 韓国の袋麺はある程度、グダグダに煮込むことを想定しているようなので、調理時間を1~2分長めにしてやることで、程よい仕上がりとなる。

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見た目はキモワルでも味はいいです…

 ちなみに、キムチも一緒に煮込んでしまった方が味が馴染んで美味しいと思う。
 使うキムチも、やはりチョンガクキムチが一番合う。
 ペチュキムチなどの葉モノ系は酸味が強くて、ラーメンの味が負けがちになる。
 まあ、個人の好みではあるが…

【食べた袋麺について】

 今の韓国、国内向け袋麺も独自に発達を続けていて、機能性を持たせたり、高級志向の製品が増えている。
 その中でもスーパーで普通に入手出来、日本であまり紹介されていないものを中心に幾つか選んでみた。

 今回食べた中だと、の「꽃게짬뽕(풀무원)」と「맛있는 라면(삼양식품)」がおすすめだ。
 「통영굴짬뽕」も悪くないが、「꽃게짬뽕」よりちょっと風味が落ちる。
 もっと、牡蠣臭くてもいいと思うのだが…

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 これらの製品はスープ、麺、かやくともワンランク上の味で、偏見を抜きに、日本でもそれなりの評価を受けそうな味の袋麺だ。
 まさか、自分が韓国製袋麺を美味しいと思うなんて、驚いたくらいである。

 結論から言えば、大人ならこの献立一日一食程度で十分な量だ。
 逆に小食になるので、連日、屋台料理やカルビ、サムギョプサル、サムゲタンなどを食い歩き、韓国製の焼酎やマッコルリを多量に飲むよりも、遥かに健康的で快適な生活が送れるのでは?(もちろん、韓国で暮らす場合はちゃんとした食事を摂りましょう)

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Vol.519 名盤紹介 『バンジージャンプする(번지 점프를 하다)』 [韓国映画音楽(OST)]

 『バンジージャンプする(번지 점프를 하다)』は2001年に公開された韓国映画群の中で、飛び抜けて異彩を放つ作品だった。

 その特異なプロットは「隠れホモ映画」とも揶揄され、一部の保守的な人々にはバカにされたが、公開当時、口コミ的な支持を集めて、スマッシュ・ヒットになった。

 この作品が韓国で公開される前、このことを予想した関係者は、かなり少なかったのではないだろうか?

 当時、現地で観た日本人の間でも割りと評判になり、美しい映像も相まってか、幾つかの日本の会社が買い付け交渉に臨んだが、韓国側売り手が韓流バブルを見込んで価格を釣り上げ、なおかつ他作品との抱合せ販売にしか応じなかったので、日本公開は、しばらくを待たなければならなかった(※)。
(※)日本公開は2005年4月

 今ではイ・ビョンホン人気に便乗してか、日本でも結構知られた作品になったが、当時の彼は俳優として今ほど過剰に偶像化がなされておらず、本当の意味で個性派だったと思う。

 この作品のOSTについて語る時、全ては主題歌に使われた、キム・ヨヌ(김연우)が歌う『오그대는 아름다운 여인』に尽きる。
 澄み切った高音のボーカルで奏でられる美しいバラードは、この曲に対して原体験が無い外国人でもそれなりに心打たれるはずだ。
 衝撃のラストを迎えた時、この『오그대는 아름다운 여인』が流れ、映画は終わるが、それは感動というよりもトラウマ経験だった。
 
 『오그대는 아름다운 여인』は、元々、韓国の伝説的ロック・バンド『들국화(野菊)』が歌っていたものが原曲で、軍事政権下で多感な時代を過ごした人々にとっては特別な曲かもしれず、1967年に生まれた監督のキム・デスン(김대승)にとっても、色々と複雑な想いがあっただろうことは想像に難くない。

 私もかつて韓国でミュージシャンをやっている知人から、この『들국화』を勧められたことがあった。

 彼は韓国の音楽シーン全般に漂う安易さに対して、いつも懐疑的だったが、この『들국화』は韓国のロックでも全く別、と語っていた記憶がある。
 
 2000年代に入り、日本では特定企業が販売を行う音楽とグループばかりが「K-POP」と称され派手に喧伝されたおかげで、韓国の音楽を聞く人は良くも悪くも増えたが、政治的メッセージや庶民の哀しみや喜びを込めた、時代を反映した韓国らしい曲や、それを歌うアーティストたちは、まだまだ、まともに紹介されていないと思う。

 この『오그대는 아름다운 여인』は、泥臭くとも韓国の音楽が持つ独自の音楽力、特にバラードが持つ力を侮ってはいけないことを改めて認識させてくれる名曲だろう。

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Vol.518 宿の追憶 [韓国生活]

 筆者はソウルに行く時、基本的に定宿に泊まるようにしている。

 しかし、「定宿」といっても何か特別契約をしているわけではないから、他の人たちと部屋取り競争をやらなくてはいけない。

 これが結構シンドくて一番嫌なワケだが、宿のスタッフが顔を覚えてくれれば、ある程度、こちらを考慮してくれるようになるので仕方ない。

 また、場所や値段など、筆者の要望に沿った宿は本当に少ないので、そういった場所を見つけたら、経営者が変わるようなことが無い限り、使い続けることになる。

 今使っている宿は設備こそ大したことはないが、価格が安い上、外国人向けに特化していて、困った時など色々頼りになるし、なによりも場所がいい。

 バスと地下鉄両方共、ルートの選択肢が多く、主要な場所までほとんど一本で行くことができ、特に恵化から徒歩で20分程度なので、大学路で飲んだ時は終電を一切気にしなくていいし、演劇を観覧する際も便利である。

 その他にも、ソウル中に散らばった主要なアート系映画館へのアクセスについて便利性が極めて高い。

 筆者が最初定宿に使っていたのは、筆洞にある中級の、昔は映画関係者御用達で有名なホテルだった。

 サービスもよく、値段も安く、外国人対応と、ソウルの安い宿泊施設の中では非常に気に入っていたのだが、ワールドカップを境に物凄い値上がりした上(もちろん大改装もやった)、それまでお世話になっていたスタッフの多くが解雇されてしまったので使うのを止めた。

 次の定宿に使っていたのは、舎堂駅近くにある古ぼけたホテルだ。

 どうやら、ある一家が物件を買い取って経営していたらしく、フロントにいるのは、いつもおばちゃんやおじいさんだった。

 そこは外国語が全く通じないホテルではあったが、あんまり筆者が頻繁に泊まるので、フロントに顔を出せば、ツーカーで分かってくれるようになり、一度火事になり焼け出されたが、良くも悪くも家族的だったので、その後も舎堂に用事がなくなるまで使い続けた。
 あの一家は今もフロントにいるのだろうか。

 その次は新林駅近くにあるモーテルだった。

 基本的にはラブホだが、そこだけはビジネスホテルの色合いが強くて、当時のソウルでは希少なタイプの宿だった。
 値段は安いが設備がよく、部屋も綺麗だった。
 かなり分かりにくい場所にあったが、モーテルが乱立する新林駅界隈でも人気があったようで、週末は満室になることが多かった。

 その後、三成洞にあるモーテルに宿を変えたが、なぜかというと江南界隈での用事が増えたためである。

 当然、狎鴎亭辺りの宿なんか高すぎて使えないので、微妙な場所にある、そこそこ安いモーテルを探して使うようになった。

 個人的にはそこを気に入っていたが、経営者が地下にあるサロンに力を入れ始めたらしく、改装後えらくサービスが悪くなり、泊まるのをやめてしまった。

 幽霊が出たのは、このモーテルのことである。

 そんなこんなと、いくつかの遍歴を経て、今の宿に落ち着いたワケだが、貧乏ツーリスト向けの安宿は、どうしても安かろう悪かろうで、やはりアタリは少ないように思う。

 韓国の物価上昇が著しい今、ビジネス向けに特化した安い宿泊施設が、ソウルで、もっと増えて欲しいことは変わらない。
 個人的にはレジデンス形式の宿が理想的だが、どこも高すぎるし、安いところは予約競争が激しい上、設備がひどかったりする。

 一度、上げ膳据え膳の高級ホテルに泊まってみたいとは常々思ってはいるけど、安いホテルとの差額で出来ることを考えれば、とてもではないが、韓国で一泊W100000-相当を超えるようなところに泊まる気にはなれない。

 もっとも、そんな予算はいつもないというのが一番の理由だけども…

aasadann.JPG
ああ、舎堂

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